4月1日から中小企業にも、改正労働基準法による時間外労働の上限規制が適用されます。
36協定で特別条項を協定しても、時間外労働の休日労働の合計時間は月100時間未満、複数月平均でも80時間未満の絶対的時間規制が始まります。
私も関東での工場運営などで、長年時間外労働の削減に取り組んでいますが、行きつ戻りつで、未だ繁忙期には大きな時間外労働をお願いせざる得ない状況があります。
今回、中原教授が残業発生のメカニズムをとても分かりやすく整理してくださっており、とても参考になりました。
多くの経営者の方が目を通されたことと思いますが、今後自らのの事業運営に生かしたいと思い、考えをまとめておきたいと思います。
1)集中
仕事は、できる人に集中します。これは上長からの指示命令による業務だけでなく、同僚など横からの依頼による業務も特定の社員に集中します。
よほどの大企業でなければ、一人ひとりの社員の全体業務量の把握をリアルタイムですることは困難であると思います。
上長はもとより、同僚もその人にどれだけの仕事が集中しているのかを把握することなく、その社員の好意に甘え仕事を依頼し続ける。そのようなことが起きていると考えます。
仕事が集中することで、その社員の経験値や社員への信頼が高まり、更にその社員に仕事が集中する。そのような循環が定着します。
経営者はこのようなサイクルが起きていることを前提に、意図的にこのサイクルを遮断しなければなりません。
2)感染
これは、先輩や同僚が働いている中で帰りにくいという雰囲気とされています。
このような帰りにくさは若い社員の方が感じやすいそうです。
集中と感染は相互に関連するとも指摘されています。
仕事ができる人は職場のロールモデルになりやすく、その人の仕事ぶりが正しいものとされ、その方が一生懸命やっている中で帰りにくい。仕事のできる忙しい社員の存在を放置することで、帰りにくい雰囲気が高まるとされています。
仕事のできる先輩を手伝うことがOJTであるというような感覚も強くあり、仕事を切り上げて退社する社員を非難するような空気が生まれることも感じています。
経営者もそのことについて明確なジャッジを下さずにいるように思えます。
仕事を終えた人が明るく退社できる環境整備が経営者の仕事であることがわかります。
ただ、一方で成果に無責任で、すべき業務をやり終えず、時間で仕事を終えて退社する。そのような無責任組織の雰囲気も感染するようにも思います。
3)麻痺
これは、長時間労働ハイのような状況が、長時間労働により生まれるとの指摘です。
月60時間を超える時間外労働は、本人の幸福感を増すそうです。
身体は大変なのに、残業への投入感や必要とされているという実感がそのような誤った幸福感を生み出しているとのことです。
経営者はこのような健康被害につながる誤った幸福感を断ち切らなければなりません。
4)遺伝
これは、先輩や上司の過去の残業経験が後輩や部下の残業に強く影響すると言うものです。
これもとてもよく分かります。同じ釜の飯を食った仲間のような、仕事や職場依存から生まれているようにも思えます。
同じ戦場で戦う仲間のような、誤ったヒロイズムや大事大主義からも来ているように思います。
職場や会社は人生の一部でしかなく、そこの所属する一人ひとりの仕事感も様々。
社員や部下は経営者や上長の所有物でも家来でもない。
役割責任こそ異なるものの、同等の立場で仕事をする仲間である。
そのような職場風土を作り出したいとも思います。
今回、4つの視点をいただいたことで、今後、残業問題の解消のフレームとして活用し、成果を上げて行きたく思います。