雇用保険法 雇用安定事業による助成金を紹介していきます。
第14回 (14) 両立支援等助成金(再雇用者評価処遇コース)
① 制度の概要
妊娠、出産、介護、育児、介護などにより退職した方が、
就業が可能になった時に復職でき、適切に評価され、
配置・処遇される再雇用制度を導入し、
かつ、希望者を採用した事業主に支給されます。
② 受給要件
❶ 次の全ての要件に該当し、
かつ❷に該当する対象労働者を雇用した事業主が対象となります。
1)以下の全てに該当する再雇用制度を新たに就業規則・労働協約で規定した。
*ここで言う再雇用制度は育児・介護休業法第27条に基づく制度を指し、
妊娠、出産、育児、介護を理由とする退職者が、当該退職した事業主等に再雇用されることに
ついて特別配慮する制度をいいます。
*既存の再雇用制度を本助成金の要領に沿って改正した場合も、改正以後の再雇用について
対象となります。
ア)制度が対象とする退職理由として、妊娠、出産、育児、介護のいずれも明記している。
イ)退職者が退職時、もしくは退職後に、⒈退職理由、⒉就業できるようになった時に
退職した事業主や関連事業主の事業所での再雇用を希望する旨の申し出を
登録記録するものであること。
*関連事業主:申請事業主と人事・雇用管理において密接な関係があり
申請事業主が規定する再雇用制度の対象となる事業主。
関連事業主が再雇用制度の対象となる事業主であることが、
再雇用制度お規定や事業主間の協定書等で明示されていることが必要です。
ウ)制度対象年齢に定年を下回る制限を設けていないこと。
エ)退職後の期間が一定期間内の者のみを対象とする制度の場合、
その期間は3年以上であること。
オ)再雇用時には以下のように退職前の勤務実績等を評価し、
処遇決定に反映することを明記している。
a) 退職前と同一雇用形態、同一職種で雇用する場合は、退職前の配置、
賃金制度及び資格制度上の格付けを評価して処遇を決定する。
b)退職前と異なる雇用形態、職種で雇用する場合は、退職前の配置、経験
勤続年数等を評価した賃金の格付けを行う
カ)退職から再雇用までの間に、就業経験、能力開発の実績がある場合は、
以下のように実績を評価し、処遇決定に反映させることを明記している。
a) 退職から再雇用までの間に、他の事業主のもとで就業実績がある場合は、
その業務内容や経験年数を評価した配置、賃金の格付けを行う
b)退職から再雇用までの間に、職業訓練の受講や資格取得等の実績がある場合は
その能力開発の実績を評価し配置や賃金の格付けを行う
キ)対象者の中期的配置、昇進、昇給等の処遇について、退職前の勤務実績
及び退職から再雇用までの就業経験、能力開発の実績を踏まえた扱いを
検討するものになっている。
*再雇用制度対象者の配置、昇進、昇給等を一律に制限するなど、
職務、役職、能力、職務経験、資格等が同等である労働者と比較して、
合理的な理由無しに低く取り扱う制度でないことが必要です。
2)再雇用制度施行後、❷に該当する対象者を採用し、無期雇用契約により
継続して6ヶ月以上雇用している。
*有期契約労働者として採用した場合は、採用日から1年以内に無期雇用契約を
締結することが必要です。
3)以下の全ての制度を就業規則や労働協約に規定している。
ア)育児・介護休業法第2条第1号に規定する育児休業
イ)同法第23条1項に規定する育児のための所定労働時間の短縮措置
ウ)同法第2条第2号に規定する介護休業
エ)同法第23条3項に規定する介護のための所定労働時間の短縮措置
*全ての規定は支給申請日に施行されている育児・介護休業法の水準を
みたしていることが必要です。
4)以下の不支給要件に該当しないこと
ア)対象社員の採用日の前後前6ヶ月の間(以下、基準期間)に、支給対象社員を雇用した事業所において
雇用保険被保険者(短期雇用、日雇労働被保険者除く)を事業主都合により解雇(退職勧奨等含む)
したことがある。
イ)基準期間に、対象社員を雇用した事業所で雇用する雇用保険被保険者を、
特定受給資格者となる離職理由により、対象社員の採用日時点での雇用保険被保険者の
6%を超え、かつ、4人以上離職させている。
ウ)対象社員に対して、法令、就業規則に基づく賃金の全額が支払われていない。
*上記ア〜ウ以外にも労働関係法令違反がある場合などの不支給要件があります。
❷ 以下の全ての要件に該当する社員が対象となります。
1)申請事業主(関連事業主)の事業所を妊娠、出産、育児、介護のいずれかの理由で退職し、
再雇用制度により採用された。
2)退職時(退職後)に、⒈退職理由、⒉再雇用の希望を申し出ていたことが
書面で確認できる。
*申し出は、退職後であっても再雇用による採用日前日までに行なっていること。
3)申請事業主(関連事業主)の事業所の退職日前日において、雇用保険被保険者として
継続して1年以上雇用されていること。
4)退職日翌日から1年以上経過後、再雇用により採用されている。
5)再雇用制度に基づき評価、処遇されていることが、支給申請書において確認できる。
6)再雇用の採用日から1年以内に無期雇用契約を締結し、
その契約において雇用保険保険者として6ヶ月以上(1年以上)継続して雇用している。
6ヶ月以上の継続雇用:1回目の支給
1年以上の継続雇用:2回目の支給
就労予定日数に対し、実際の就労日数が5割に満たない場合は支給対象となりません。
* ❶ 年次有給、母性健康管理措置として休業、産前産後休業、育児休業、介護休業、
子の看護休暇、介護休暇などによる休業日は就労日にカウントします。
* ❷就業規則、労働協約に定める育児・介護のための所定労働日数の短縮措置により
所定労働日数から除外された日は、就労予定日にはカウントしません。
7)以下に該当しない
ア)退職から再雇用採用日の前日までの間に、申請事業主(関連事業主)と
雇用、請負、委任の関係にあった。
出向、派遣、請負、委任の関係により申請事業主(関連事業主)の事業所で
就労していた。
イ)退職から再雇用採用日の前日までの間に、申請事業主と資本的・経済的・
組織的関連性からみて密接な関係にある事業主に雇用されていた。
○ 申請事業主と上記雇用事業主のいずれか一方の、株式数や出資総額に
締める他方の保有株式、出資額の割合が50%を超えている。
○ 代表者が同一、もしくは取締役を兼務しているものがいずれかの取締役会の
過半数を占めている。
ウ)申請事業主の代表者、もしくは取締役の3親等以内の親族である。
エ)申請事業主の退職時に、妊娠、出産、育児、介護、およびそのための
法律上の休業や勤務制度の利用等を理由により解雇された。
または退職勧奨その他不利益な取り扱いを受けた。
④ 受給可能額
(1)中小企業
1人目:38万円(生産性要件を満たした場合は48万円)
2〜5人目:28万5千円(生産性要件を満たした場合は36万円)
(2)中小企業以外
1人目:28万5千円(生産性要件を満たした場合は36万円)
2〜5人目:19万円(生産性要件を満たした場合は24万円)
③ 受給の手続き
1)申請期限
継続雇用6ヶ月後(1回目)申請:再雇用後、無期雇用契約締結日から6ヶ月経過日翌日から2ヶ月以内
継続雇用1年後(2回目)申請:再雇用後、無期雇用契約締結日から1年経過日翌日から2ヶ月以内
2)申請先:本社(人事部門が所在する事業所)の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部
3)必要書類は以下のリンク先にて確認いただけます。
以上、雇用保険法 雇用安定事業による助成金、
第14回 (14) 両立支援等助成金(再雇用者評価処遇コース) についてご紹介いたしました。
終身雇用制は日本が誇る素晴らしい慣行であると思います。
ただ、就職後一度も辞めずにその会社に生涯務めるという働き方から
ここにある出産や育児、介護、また、留学やキャリアップのための他社での業務経験など
退職や再雇用を経てその会社で働き続けるという働き方はこれから増えるだろうし、
会社にとっても人材の多様性が高まることにより得るものはとても大きい。
そのように実感しています。
働きやすさが地域で一番、そんな会社づくりのきっかけとしてもご活用いただければと思います。