雇用保険法 雇用安定事業による助成金を紹介していきます。
第12回 (12) 両立支援等助成金(育児休業等支援コース:代替要員確保時)
① 制度の概要
育児休業取得者の代替要員を確保し、休業取得者を原職等に復帰させた
中小企業事業主に支給されます。
② 受給要件
1)中小企業事業主である。
中小企業事業主の要件 | 資本金(出資総額) | 常勤社員数 | |
小売業(飲食店含む) | 5000万円以下 | または | 50人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 | |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 | |
製造業などその他業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
2)育児休業取得者を、育児休業終了後に原職等に復帰させる旨の取り扱いを
申請予定労働者の復帰より前に、就業規則や労働協約で規定している。
3)育児休業取得者に代替要員を確保した
A: 代替要員:次の全てに該当する方を指します。
ア)育児休業取得者の職務を代替する者であること
育児休業取得者が複数の職務を兼務していた場合は、その一部のみの代替では
要件を充しません。
休業取得者が有資格者で、その職務実施のために資格が必要な場合は
代替要員も有資格者であることが必要です。
休業取得者に職制場の地位に対しての手当が支給されている場合は、
代替要員にもその手当が支給されている必要があります。
イ)育児休業取得者と同じ事業所、部署で勤務していること
育児休業取得者の職務を他の事業所に移管し、移管後の事業所において
代替要員を確保する場合は、事業所が異なっていてもOKです。
ただし、休業取得者と同種の職務が他の事業所にあるというだけでは
この要件に該当しません。
ウ)育児休業取得者と所定労働時間が概ね同等であること
短い場合は、1日当たり1時間以内、1週間当たり1割以内であること。
1日当たりで計算する場合は、月の所定労働日数が同等である場合に限られます。
エ)新規雇用、もしくは新規派遣により確保された者であること。
オ)確保の時期が休業取得者、もしくはその配偶者の妊娠について
事業主が知り得た日以降であること。
カ)休業取得者の(産後休業から)育児休業期間において、連続して1ヶ月以上
勤務した期間の合計が3ヶ月以上であること
単発的な短期の欠勤(各月毎所定労働時間の10%未満)、年次有給休暇、子の看護休業
介護休業等、法に基づき代替要員が請求した休業、雇用調整助成金の受給対象となる
休業は勤務した期間に算入することができます。
B: 以下の場合も支給対象となります
キ)1名の育児休業取得者の代替要員を複数名の短時間労働者で確保する場合
この場合、上記のウ)カ)については、各短時間勤務代替要員の所定労働時間、
もしくは勤務した時間の合計となります。
ク)育児休業取得者が役職者や専門的職務担当者である等の理由で、
同一企業内で休業取得者の職務を他の労働者Aが担当し、
その労働者の職務代替要員Bを確保する「玉突き」の場合、
労働者Aが上記ア)〜ウ)、カ)に該当し、労働者Bが上記ア)〜カ)に該当すること
4)雇用する労働者に、連続して1ヶ月以上休業した期間が合計して3ヶ月以上の
育児休業を取得させ、かつ、2)の規定に基づき原職等に復帰させた。
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育児休業とは
− 育児介護休業法第2条第1号に規定する育児休業
ー同法第23条第2項に規定する3歳に満たない子を養育する労働者に関する代替措置
ー同法第24条第1項に規定する小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関する措置
ー有期契約労働者が入社1年を経過する前に申し出た場合に育児休業を認める等、
法律を上回る育児休業
ー育児休業期間中に臨時的・一時的に就労した場合は、月に10日(超える場合は80時間)以下
である場合は育児休業と判断されます。
臨時的・一時的な就労:育児休業開始当初は全日休業していたが、突発的事態に対応するため
都度事業主と合意の上、他の社員では代替不能な臨時の業務を行う場合などは該当。
育児休業開始当初より、あらかじめ決められた1日4時間で月20時間勤務する場合や
毎週特定曜日、時間に勤務する場合は該当しません。
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原職等:⑴原職または⑵原職相当職のいずれかで、⑶〜⑹のすべての要件を満たすもの
⑴ 原職:産前休業、育児休業の前に就いていた部署(例:〇〇部△△課□□係の場合は□□係)
及び職務と同一の部署及び職務。
妊娠出産中の女性労働者が休業の前に軽易業務への転換を請求し、
軽易業務に就いていた場合の「原職」とは業務転換前に就いていた職務(ただし、
本人の希望により転換後の軽易業務に復職した場合は原職復帰とみなされます。)
⑵ 原職相当職:次の❶❷の全てに該当する場合
❶育児休業前と休業後とで職務内容が異なっていないこと。
(少なくとも厚生労働省編職業分類の中分類が同一であることが判断の目安)
❷育児休業後も休業前と同一の事業所に勤務していること。
ただし、育児との両立に好ましい事業所への復帰等、同一の事業所に勤務しない場合でも
その選択が本人によるものであること。
また、同一の事業所に勤務しないことについて、通勤距離・時間、勤務体制、
時間外労働の実情等から客観的合理性があり、かつ、勤務内容や処遇等が
休業前と変わらない場合は同一の事業所への勤務でなくても良い。
❸育児休業後の職制上の地位が、休業前を下回っていないこと。
休業前に支給されていた職制に係る手当(例:主任手当、管理職手当)が
休業後支給されていない場合は、職制上の地位が同等とはされません。
❹育児休業後の所定労働時間が短く変更されている場合は、就業規則、労働協約に
定められた育児・介護のための短時間勤務制度、または男女雇用機会均等法に基づく
勤務時間短縮措置の利用によるものであること。(有期雇用労働者も同様です。)
❺育児休業後に短時間労働者として新たに雇用契約を締結している場合や、
月給制を時給制に変更する等、給与形態が変更されている場合は、
それが本人の希望によるものであっても、原職等への復帰とはされません。
ただし、就業規則、労働協約に定められた育児・介護のための短時間勤務制度、
または男女雇用機会均等法に基づく勤務時間短縮措置の利用による給与の支払い方法の
変更は可とされていますが、この場合でも、月給制を時給制に変更する等の扱いは
原職等への復帰とはされません。
有期雇用契約の方が職場復帰にあたり雇用契約を更新する場合は、
新たに雇用契約を締結しても対象となりますが、この場合でも
所定労働時間を変更する場合は、上記⑷の措置による必要があります。
❻育児休業後に在宅勤務を勤務形態とする場合も対象となりますが、
在宅勤務規定を整備し、業務日報により勤務日、始業終業時刻、業務内容など
勤務実態が確認できる場合に限られます。
また、在宅勤務が本人の希望によるものであることが確認でき、
上記⑵の❶、⑶を満たしている場合に限られます。
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5)4)に該当する方を、育児休業(産後休業終了後に引き続いて育児休業を
した場合には、産後休業)の開始日に雇用保険の被保険者として雇用していた。
6)4)に該当する方を、原職等復帰後、引き続き雇用保険の被保険者として
6ヶ月以上雇用している。
*期間中に一定の就労実績があることが必要です。
一定の就労実績:就労予定日数に対して実就労日の割合が5割以上であること。
就労日数には、年次有給休暇、母性健康管理措置としての休業、産前産後休業
育児休業、介護休業、子の看護休業、介護休暇等法に基づき請求できる休業
雇用調整助成金の受給対象となる休業を含めます。
就業予定日数には、就業規則や労働協約で規定する育児・介護のための所定労働日数の
短縮措置により所定労働日から除外された日は、就労予定日数に含めまさん。
ただし、実際に勤務しないまま申請期限を迎えた場合は支給対象外となります。
7)初めて本助成金を支給決定された育休業取得者の現職復帰日から6ヶ月経過した日の
翌日から5年以内である。
*過去に育児・介護雇用安定等助成金や中小企業両立支援助成金の代替要員にかかる助成金を
受給した場合には、これらの助成金の最初の受給対象となった育児休業取得者の原職等復帰日から
6ヶ月経過した日の翌日から5年以内であることが必要です。
8)育児・介護休業法第2条第1号に規定する育休業の制度及び育児のための短時間勤務制度について
就業規則や労働協約に規定している。
9)次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し都道府県労働局長に届け出ており、
計画を公表し、社員に周知するための措置を講じている。
*次世代育成支援対策推進法第15条の2に基づく認定事業主は除きます。
④ 受給可能額
育児休業取得者一人当たり47万5千円(生産性要件を満たした場合は60万円)
一年度内(4月1日から3月31日)に1事業主あたり述べ10人まで支給されます。
支給対象期間は、最初の助成金対象者が支給要件を満たした日から5年間です。
くるみん認定事業主は平成37年3月31日まで、延べ50人まで支給
対象育児休業取得者が有期労働契約である場合一人当たり9万5千円加算されます。
(生産性要件を満たした場合は12万の加算)
③ 受給の手続き
1)申請期限:育児休業取得者の育児休業終了日翌日から6ヶ月経過日の翌日から2ヶ月以内
2)申請先:本社(人事部門が所在する事業所)の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部
3)必要書類は以下のリンク先にて確認いただけます。
以上、雇用保険法 雇用安定事業による助成金、
(12) 両立支援等助成金(育児休業等支援コース:代替要員確保時)についてご紹介いたしました。
本助成金をきっかけにして両立支援制度を整備し、
御社の働き方改革、人材確保はもとより、効率性アップによる業績向上といった
好循環作りにお役立ていただければと幸いです。