雇用保険法 雇用安定事業による助成金を紹介していきます。
第11回 (11) 両立支援等助成金(育児休業等支援コース:後半 職場復帰時)
① 制度の概要
「育児復帰支援プラン」を作成し、プランに沿って社員が育児休業を取得した後、
職場復帰させた中小企業事業主に支給される助成金です。
② 受給要件
1)育児休業支援助成金を育児休業取得時に受給した中小企業事業主である。
中小企業事業主の要件 | 資本金(出資総額) | 常勤社員数 | |
小売業(飲食店含む) | 5000万円以下 | または | 50人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 | |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 | |
製造業などその他業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
2)育児休業支援プランにより、「育児休業取得時助成金」の支給対象とした
社員に、育児休業中に職場に関する情報及び資料の提供をしている。
fullsizeoutput_585 180625育児休業支援プラン策定マニュアル
職場に関する情報及び資料の提供:自宅で閲覧可能なイントラネット(パソコン貸与などが条件)
取得者の担当(予定)職務に関する情報、業務データ、関連する企画書や業界紙など
3)育児休業終了日のおおよそ2ヶ月前、終了日後のおおよそ2ヶ月後にそれぞれ社員の上司、
または人事労務担当者による面談を行い180625【育】様式第2号「面談シート」に
結果を記録している。
4)面談結果を踏まえ、育児休業取得者を原則として原職等に復帰させている。
*育児休業取得者の希望により、現職等に復帰させない場合は、面談記録により
本人の希望が確認できることが必要。
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原職等:⑴原職または⑵原職相当職のいずれかで、⑶〜⑹のすべての要件を満たすもの
⑴ 原職:産前休業、育児休業の前に就いていた部署(例:〇〇部△△課□□係の場合は□□係)
及び職務と同一の部署及び職務。
妊娠出産中の女性労働者が休業の前に軽易業務への転換を請求し、
軽易業務に就いていた場合の「原職」とは業務転換前に就いていた職務(ただし、
本人の希望により転換後の軽易業務に復職した場合は原職復帰とみなされます。)
⑵ 原職相当職:次の❶❷の全てに該当する場合
❶育児休業前と休業後とで職務内容が異なっていないこと。
(少なくとも厚生労働省編職業分類の中分類が同一であることが判断の目安)
❷育児休業後も休業前と同一の事業所に勤務していること。
ただし、育児との両立に好ましい事業所への復帰等、同一の事業所に勤務しない場合でも
その選択が本人によるものであること。
また、同一の事業所に勤務しないことについて、通勤距離・時間、勤務体制、
時間外労働の実情等から客観的合理性があり、かつ、勤務内容や処遇等が
休業前と変わらない場合は同一の事業所への勤務でなくても良い。
⑶育児休業後の職制上の地位が、休業前を下回っていないこと。
休業前に支給されていた職制に係る手当(例:主任手当、管理職手当)が
休業後支給されていない場合は、職制上の地位が同等とはされません。
⑷育児休業後の所定労働時間が短く変更されている場合は、就業規則、労働協約に
定められた育児・介護のための短時間勤務制度、または男女雇用機会均等法に基づく
勤務時間短縮措置の利用によるものであること。(有期雇用労働者も同様です。)
⑸育児休業後に短時間労働者として新たに雇用契約を締結している場合や、
月給制を時給制に変更する等、給与形態が変更されている場合は、
それが本人の希望によるものであっても、原職等への復帰とはされません。
ただし、就業規則、労働協約に定められた育児・介護のための短時間勤務制度、
または男女雇用機会均等法に基づく勤務時間短縮措置の利用による給与の支払い方法の
変更は可とされていますが、この場合でも、月給制を時給制に変更する等の扱いは
原職等への復帰とはされません。
有期雇用契約の方が職場復帰にあたり雇用契約を更新する場合は、
新たに雇用契約を締結しても対象となりますが、この場合でも
所定労働時間を変更する場合は、上記⑷の措置による必要があります。
⑹育児休業後に在宅勤務を勤務形態とする場合も対象となりますが、
在宅勤務規定を整備し、業務日報により勤務日、始業終業時刻、業務内容など
勤務実態が確認できる場合に限られます。
また、在宅勤務が本人の希望によるものであることが確認でき、
上記⑵の❶、⑶を満たしている場合に限られます。
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5)復帰した社員を、育児休業終了後継続して雇用保険の被保険者として
6ヶ月以上雇用しており、支給申請日に雇用している。
就労予定日数に対し、実際の就労日数が5割に満たない場合は支給対象となりません。
❶ 年次有給、母性健康管理措置として休業、産前産後休業、育児休業、介護休業、
子の看護休暇、介護休暇などによる休業日は就労日にカウントします。
❷就業規則、労働協約に定める育児・介護のための所定労働日数の短縮措置により
所定労働日数から除外された日は、就労予定日にはカウントしません。
6)育児・介護休業法第2条1号に定める育児休業制度、および育児のための短時間制度について、
就業規則または労働協約で定めている。
7)次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、
その旨を都道府県労働局長に届け出ている。
一般事業主行動計画を公表し、従業員に周知させるための措置を講じている。
③職場支援加算
育児休業取得者の代替要員の雇用等を行わずに、
以前から雇用する従業員が育児休業取得者の業務を代替する場合で、
以下のいずれにも該当する事業主に、職場復帰時の支給に加算されます。
1)上述の中小企業事業主である。
2)育児休業取得者の業務を、以下の全ての条件に該当する自社の社員に代替させている。
ア)雇用保険被保険者である
イ)育児休業取得者やその配偶者の妊娠の事実を知り得た日の以前に採用している。
ウ)連続1ヶ月以上、業務を代替する期間が合計3ヶ月以上ある。
*代替業務をする期間中の単発的な短期の欠勤(月間所定労働時間の10%未満まで)や
有給休暇取得日、雇用調整助成金の受給対象となる休業については本期間への参入OK
3)業務の見直し、効率化のために以下のア)・イ)の取り組みをいずれも実施している。
ア)育児休業取得者・業務代替者の業務について、見直し・効率化を検討し、
以下のいずれかの結果が確認できる。
a) 業務の一部の休止・廃止
b)手順・工程の見直し等により効率化・業務量の減少
c)マニュアル等の作成による業務、作業手順の標準化
180709両立支援助成金(職場復帰時:職場支援加算)実施結果書により確認します。
イ)育児休業取得者の休業中の業務分担を明確にし、業務代替者の上司や人事担当者が
業務代替者に代替業務の内容、賃金について面談説明している。
4)業務代替者に対して支給する業務代替手当、特別業務手当等を就業規則や
労働協約に既定している。
*これらの手当は代替業務者が代替する職務内容、業務内容を評価するものであり、
労働時間に応じて支給される残業手当等でないことが必要です。
5)上記の手当などにより、業務代替期間中に合計3ヶ月間、業務代替者の賃金が
1人当たり月1万円以上賃金が増額されている。
6)上記の業務代替期間において、業務代替者全員の1ヶ月ごとの所定外労働時間が
7時間を下回っている。
④ 受給可能額
(1)職場復帰時
1企業あたり2名まで(正社員や期間の定めのない社員、有期契約社員、各1名)
一人当たり28万5千円(生産性要件を満たした場合は36万円)
(2)職場支援加算
上記金額に1人につき19万円(生産性要件を満たした場合は24万円)加算
③ 受給の手続き
1)申請期限:育児休業取得者の育児休業終了日翌日から6ヶ月経過日の翌日から2ヶ月以内
2)申請先:本社(人事部門が所在する事業所)の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部
3)必要書類は以下のリンク先にて確認いただけます。
以上、雇用保険法 雇用安定事業による助成金、
(11) 両立支援等助成金(育児休業支援コース:後半 職場復帰時)についてご紹介いたしました。
休業取得時、職場復帰時の要件を整える中で業務の可視化や共有
社員の多能工化、業務の無駄ドリ、工程の簡素化などが自ずと進みます。
本助成金をきっかけにして両立支援制度を整備し、
御社の働き方改革、人材確保はもとより、効率性アップによる業績向上といった
好循環作りにお役立ていただければと幸いです。