雇用保険法 雇用安定事業による助成金を紹介していきます。
第9回 ❾ 両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)
① 制度の概要
仕事と介護の両立に関する職場環境整備の取り組みを行い
「介護支援プラン」を作成し、介護休業の取得・職場復帰または
働きながら介護を行うための勤務制限制度の利用を円滑にするための
取り組みを行った事業主に支給されます。
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② 受給要件
受給にあたっては以下のすべての要件を満たしている必要があります。
(A) 仕事と介護の両立のための職場環境整備(以下の項目)を行う。
1)「労働者の仕事と介護の両立関する実態把握」のためにアンケート調査を実施する
・ 平成27(2015)年4月1日以降に実施
・ 厚生労働省が指定する所定の調査票により実施 180612実態把握調査票
* アンケート項目を減らした場合は対象となりませんのでご注意を。
・ 雇用する雇用保険被保険者全員に対して実施
* ただし、常時雇用する雇用保険被保険者が100人以上の事業主は
最低100人以上に対して実施すればOKです。
・ アンケートの回収率が3割以上、または100人以上
・ アンケート実施後、結果を集計し、厚生労働省が指定する所定の報告書により
取りまとめた 180611介護離職防止アンケート結果報告書
2)厚生労働省が指定する資料により自社の仕事と介護の両立支援制度の周知状況を把握する
制度内容を確認した上で、自社の介護休業関係制度について見直し、
育児・介護休業法に沿った制度を導入する。
*すでに育児・介護休業法に沿った制度を導入している場合は、
新たな制度の導入は不要です
*育児・介護休業法に沿った介護休業関係制度関連規定の整備が必要です。
【育児介護休業法の関連条文】
1.介護休業(同法2条2号)
2.介護休暇(16条の5)
3.所定外労働の制限(16条の8、9)
4.時間外労働の制限(17条)
5.深夜業の制限(19条、20条第1項)
6.所定労働時間の短縮等の措置(23条第3項)
以上の6つの全ての制度を含む規定の整備が必要です。
3)介護に直面する前の労働者への支援のため、次のa、bのいずれも実施していること
a 厚生労働省が指定資料(180611介護両立支援社内研修所定様式)を使用した
人事労務担当者等による社内研修を実施する。
*1時間以上の研修を企業単位で企画、実施することが必要です。
複数の企業が合同で行う研修や、複数企業を対象とする外部研修、
外部講師のビデオにより行うものは対象となりません。
*雇用保険被保険者である労働者の80%以上の受講が必要です。
常時雇用する被保険者数が100人以上の場合は80人以上の受講でOKです。
*研修時間内に質疑応答ができること(本社と支店間をネット繋ぐ場合は両会場とも)
b厚生労働省が指定資料(180611仕事と介護両立支援制度の周知)を使用した
仕事の介護の両立支援制度の周知
* abいずれの資料にも自社の両立支援制度を記載していることが必要です。
* 原則、(長期休業者等を除き)雇用する全労働者に対して実施することが必要です。
・ 実施後、所定様式(180611介護離職防止支援研修実施結果書)による結果の記録が必要です。
4)介護に直面した労働者の支援のため、仕事と介護の両立に関する相談窓口を設置し、
全労働者に周知した。
*相談窓口は全事業場に設置の必要はありません。(本社のみでもOKです。)
担当者の氏名、電話番号、メールアドレスなどの相談先が特定でき
全労働者が相談できる体制になっていることが必要です。
*相談窓口担当者は上記3)aの社内研修を受講し、
厚生労働省指定資料(180612相談窓口対応ポイント)に沿って
相談ポイントを事前に確認します。
*担当者の社内研修受講は窓口を社外に設置する場合や、
窓口担当者が研修の講師を務める場合は必要ありません。
* 周知は所定資料(180611仕事と介護両立支援制度の周知)に沿って
雇用する全労働者に行います。
5)介護支援プランにより、介護休業の取得、職場復帰、介護休業関係制度利用支援措置の
実施をあらかじめ規定し、労働者へ周知していること。
*規定や周知は支給対象労働者の介護休業開始日、または制度利用開始日前日までに
実施しておく必要があります。
*規定については、就業規則に規定、もしくは介護休業関係制度利用マニュアルを作成し
社内報などで周知します。
6)上記1)〜5)の実施後、介護休業を取得、または介護制度を利用する労働者が生じ
所定の措置を講じている。
(A) 以下の要件を満たす介護休業を支給対象労働者が取得していること
(1)支給対象労働者
同一の対象家族について連続1ヶ月以上、または合計30日以上取得し、
職場復帰している。
介護休業開始日の1ヶ月以上前から申請事業主の雇用保険被保険者として
雇用されている。
取得した介護休業が、就業規則、労働協約に規定する介護休業制度の範囲内であること。
(2)家族の要介護の事実について把握してから、介護休業開始日の前日までに
介護休業取得者が上司、または人事労務担当者と1回以上面談を実施し、
結果を記録し、取得者のための介護支援プランを作成すること。
*家族の状況などにより面談が困難な場合は、電話やメールなどでもOKです。
(3)介護支援プランに基づき、介護休業開始日前日までに業務の引き継ぎを実施
*家族の状況などにより対面での引き継ぎが困難な場合は、電話やメールなどでもOKです。
(4)介護休業終了後、上記(2)の面談結果を踏まえ、原則として原職等に
復帰させている。
*原職等については180613両立支援助成金支給申請手引き39ページをご確認ください。
*介護休業取得者本人の希望により原職等へ復帰しない場合は、
面談記録により本人が希望する職場復帰が確認できる必要があります。
(5)介護休業が終了し、職場復帰後1ヶ月以内上司または人事労務担当者による
フォロー面談を実施し、結果を記録している。
(6)復帰後、継続して雇用保険被保険者として1ヶ月以上雇用しており、
支給申請日においても雇用している。
(B) 介護制度
(1)以下の介護制度を同一の対象家族いついて連続3ヶ月以上または合計90日以上
取得した雇用保険被保険者であり、
制度利用開始日の3ヶ月前から申請事業主に雇用保険被保険者として雇用されている。
【介護制度】
・ 所定外労働の制限制度 ・ 時差出勤制度 ・深夜業の制限制度
・ 短時間勤務制度
*いずれも就業規則や労働協約に規定している制度の範囲内であること
*利用期間、取得回数、要介護状態、対象家族の範囲などにおいて
法律を上回る取り扱いを規則や協約で規定している場合は、
上回る制度も対象となります。
【制度利用開始日の3ヶ月前から雇用されている】
介護制度利用開始日の前日以前3ヶ月間に、申請に係る介護制度の利用実績がある
労働者は対象となりません。
同期間に事業場外労働のみなし労働時間制、裁量労働制が適用されていた労働者
および管理監督者を対象としません。
助成金の対象となる労働者
1)所定外労働の制限制度を利用し申請する場合
制度利用開始日の前日以前3ヶ月間の月平均所定外労働時間が20時間以上の労働者
2)時差出勤制度を利用し申請する場合
1日の所定労働時間を変更することなく、始業または終業時刻を1時間以上繰り上げ
または繰り下げる制度を利用する労働者
3)深夜業の制限制度を利用し申請する場合
交代制勤務等により所定労働時間に深夜が含まれる労働者であり、
制度利用開始日の以前3ヶ月間のうち12日以上深夜を含む勤務実績がある労働者
4)短時間勤務制度を利用し申請する場合
1日の所定労働時間が7時間以上であり、所定労働時間を1時間以上短縮する制度を
利用する労働者
* 以下に該当する場合は支給対象外となります。
・ 裁量労働制、事業場外労働のみなし労働時間制、変形労働時間制が
適用される労働者が、上記3制度のいずれかの制度を利用している場合
( ただし、短時間勤務制度利用者には上記3制度を適用しないことを
明記している場合は助成金の対象となります。)
・ 短時間勤務の利用に当たり、正規雇用労働者であった者が、給与形態を
月給制から時給制に変更している等、それ以外の雇用形態に変更されて
いる場合(本人の希望によるものも含みます。)
・ 規則や協約において短時間勤務を利用した場合の始業・終業時刻を特定不能で
かつ、始業・終業時刻の決定方法の定めがない場合。
【 制度を連続3ヶ月以上または合計90日以上取得した 】
1)制度通りの勤務実績として確認される場合
制度利用期間の連続3ヶ月または合計90日の期間中
1ヶ月ごとの所定労働日数のうち5割以上就労し、就労日数の8割以上を規則、
協約に規定した制度通りに勤務したことが確認できること。
連続3ヶ月の介護制度利用期間を申請する場合、制度利用期間が3ヶ月を超える場合は
任意の3ヶ月を抽出して申請できます。
合計90日の制度利用期間を申請する場合は、個々の制度利用期間ごとに勤務実績を確認します。
制度利用期間の合計が90日を超え、かつ1回の利用期間が1ヶ月を超える場合は
連続する1ヶ月以上の期間を任意で抜き出し申請できます。
1回の制度利用期間が1ヶ月未満の場合は、その期間の勤務実績を確認します。
2)制度どおりに勤務したと判断されない場合
各支援制度において、以下の場合は制度通りに勤務したと判断されません。
また、出退勤の打刻記録がない場合も助成金の対象となりません。
⒈ 所定外労働の制限制度の場合
a 所定の終業時刻から15分以降の時刻に退勤時刻がある日
b 制度利用期間の所定外労働時間が、制度利用開始日前日以前3ヶ月間の
所定外労働時間以上の場合
⒉ 時差出勤制度の場合
a 始業・終業時刻を繰り上げる場合
所定の終業時刻から15分以降の時刻に退勤記録がある日
b 始業・終業時刻を繰り下げる場合
所定の始業時刻から15分以前の時刻に出勤記録がある日
⒊ 深夜業の制限制度の場合
a 深夜(午後10時〜午前5時)に就労記録がある日
b 制度利用期間の深夜に就労した日数が、制度利用開始日前日以前3ヶ月間の
深夜就労日数以上の場合
⒋ 短時間勤務制度の場合
a 所定の終業時刻から15分以降の時刻に退勤記録がある日
b 1日の所定労働時間を短縮しているが、週、月の所定労働時間が短縮されていない場合
c 制度利用期間の時間当たりの基本給等(職務手当、資格手当等の諸手当、賞与含む)の
水準および基準が、制度利用前より下回る場合
(2)対象家族の要介護の事実について把握してから、介護休業開始日の前日までに
対象介護休業取得者が上司、または人事労務担当者と1回以上面談を実施し、
結果を記録し、取得者のための介護支援プランを作成している。
*対象家族の状況などにより面談が困難な場合は、電話やメールなどでもOK
(3)介護支援プランに基づき、介護休業開始日前日までに介護制度利用期間中の
業務体制の検討を実施している
(4)対象介護制度利用者の連続3ヶ月、または合計90日の介護制度利用期間後1ヶ月以内に
上司または人事労務担当者によるフォロー面談を実施し、結果を記録している
(5)対象介護制度利用者を連続3ヶ月、または合計90日の介護制度利用期間後、
引き続き雇用保険被保険者として1ヶ月以上雇用し、申請日において雇用している。
③ 受給可能額
A 介護休業
1企業あたり2人(有期契約労働者、無期雇用労働者1人ずつ)まで
1人につき57万円(大企業38万円)、生産性要件を満たす場合それぞれ72万円(48万円)
B介護制度
1企業あたり2人(同上)まで
1人につき28.5万円(大企業19万円)、生産性要件(180529生産性要件)を満たす場合
それぞれ36万円(24万円)
③ 受給の手続き
申請期限
A 介護休業:介護休業復帰日から1か月経過日の翌日から2ヶ月以内
B介護制度:申請対象の連続3ヶ月、または合計90日の制度利用期間の最終日から
1ヶ月経過日の翌日から2ヶ月以内
申請先: 本社(人事労務管理部署)の所在地を管轄する等道府県労働局雇用・均等部
申請書類:こちらでご確認を 180613両立支援助成金支給申請手引き 23ページより
以上、雇用保険法 雇用安定事業による助成金、
❾ 両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)についてご紹介いたしました。
なかなか要求事項も多く利用のハードルが高いように思えますが、
介護離職による貴重な人材流出を防ぐための制度、およびその運用体制を整備し
対象となる方に実施するためのガイドライン、マニュアルが厚生労働省より示されており
それに沿って社員の雇用継続を支援することで助成を受けることができます。
人手不足の中で中小企業にとってこそ不可欠な制度ですので、
本助成金をきっかけに両立支援制度を整備いただき、
御社の働き方改革、人材確保にお役立ていただければと幸いです。