① 無期転換申込権の行使の効果
社員の申し込みに対して
会社が承諾しない旨を伝えたとしても、
無期労働契約は成立します。
本制度は、同一の使用者との間で締結された有期労働契約の通算契約期間が
5年を超えることとなる労働者が
期間の定めのない労働契約の締結を申し込んだときは
使用者はその申し込みを承諾したとみなす制度ですので、
無期雇用契約が成立する条件として
労働者の申し込みに対する会社の承諾を要件としていません。
② 無期転換後の労働条件
次に無期転換後の当該労働者の労働条件ですが、
この場合において、
当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、
1)現に締結している有期労働契約の内容である労働条件
(契約期間を除く。)と同一の労働条件
2) 当該労働条件(契約期間を除く。)について
別段の定めがある部分を除く。とする。
条文は上記のように定めています。
ここには二つのことが書かれています。
1)無期転換後はこれまでと同じ労働条件(勤務地、勤務時間、時給など)が踏襲される。
変わるのは契約期間のみでである。
改めて、無期契約社員≠正社員であることを確認します。
2)別段の定めにより、これまでと異なる労働条件を定めることができる。
例えば、長期間お勤めいただくことが確定するので、
ー 短時間でなく、フルタイムで働いていただくように勤務時間の条件を変更する。
ー 勤務地を現職に固定せず、転勤などに対応いただけるように変更する。
などです。
③ 別段の定めによる変更
別段の定めには以下のような組み合わせが考えられます。
方法 | 変更可否 | 不利益変更 | 留意点 |
個別合意 | OK | OK | 労働者に十分な説明、十分な検討時間を与えた上での同意であること 労働協約や就業規則に違反している条件は不可 |
就業規則 | OK | OK | 1)無期転換申込権取得前の不利益変更ー労働契約法7条適用 → 就業規則の労働条件自体が 合理的であれば、無期労働契約の労働条件に 2)無期転換申込権行使後の 不利益変更ー労働契約法10条の類推適用 → 不利益の程度、変更の必要性、内容の相当性、労働者の 意見聴取などに照らして合理的であれば、無期労働契約の労働条件に 3)無期転換申込権取得後、行使前 → 行使後と同様の判断 |
労働協約 | OK | OK | 労働者の不利な事項についても原則有効、 ただし、特段の不合理性がある場合は効力否定 無期転換権行使後の不利益変更も可能 |
別段の定めによる労働条件の変更については、
有期契約労働者の契約更新時時これまで行われていた範囲内であれば
所定労働日や始業就業時刻(勤務時間)の変更、賃金改定などを
上記のいずれかに定めることで合理性が認められる可能性が高いとされています。