シェアリングエコノミーの課題
シェアリングエコノミープラスの側面を述べてきましたが、
シェアリングエコノミーにも解決すべき課題があります。
1)安全性の確保—シェアリングエコノミーの信用と信頼
シェアリングエコノミーはマッチングプラットフォーム上での事後的に行う相互評価により
個人の「相互信用」を醸成しています。
このような信用形成のメカニズムについて不安を覚える人は少ないと報告されています。
一方で、サービスの信頼に不安を覚える人が多いことが指摘されています。
シェアリングエコノミーによるサービスは「事故やトラブル時の対応に不安がある」ので利用したくない、
あまり利用したくないとする回答者が世代を問わず60%以上いることが、
総務省の調査研究で明らかになっています。
従来、製品やサービスの信頼は業法規制の中での国の許可、
企業が自社のブランド維持のために行う品質や安全への自主努力により培われてきました。
とりわけ起こり得る事故の被害が比較的大きなものである場合、
シェアリングエコノミーの事後評価の仕組みは安全を保証するために十分に機能しません。
各事業者は損害保険サービスの提供などを行っていますが、
これも事後的なもので事前の安全確保には機能しません。
現在、シェアリングエコノミーに関わる事業者の自主的ルール策定などが提唱されています。
自主的ルールづくりの進展については今後も注視すべきです。
2)法的グレーゾーンの存在
車の相乗りサービスは違法な白タク行為ではないか?
子守の派遣サービスは保育事業の規制対象ではないのか?
何が違法で何が合法であるのかが明確に示されずに置かれています。
グレーゾーンについての解消は早急になされるべき課題です。
3)外部不経済への対応
例えばAirbnbの有益性の一つは既存のホテルなどがない地域で宿泊サービスを利用できることです。
これは地域経済や旅行客にとってはプラスですが
近隣住民からすれば、観光地ではない静かな住宅地に突然多くの観光客が訪れ、
望まない生活環境の変化を強いられることとも捉えられます。
サービスの当事者以外が被る不利益についてもシェアリングエコノミーの事後評価は機能しません。
ここでも自主的ルール策定が求められています。
4)不公平な競争による既存事業の破壊
旅行中の宿泊であれば、標準化されたホテルでのサービスを求める客、
民家でのユニークな宿泊経験を求める客とそのニーズは様々でそれぞれの事業は相互補完的です。
一方、移動を考えると、従来のタクシーとUberが提供する本質的サービスに違いはありません。
利便性やコストに優れる事業者を利用者は選択するようになります。
ただ、上に述べた安全を確保するための業規制に適切に対応するために
必要な投資を行なっているタクシー事業者とそうではないUberとの競合は公平さを欠きます。
この点も解決されるべき課題です。