新潟市に本社を置く株式会社大谷さまの事業承継事例です。
大谷さまは全国135店舗の印章店を展開し、日本一の売上を誇るハンコ屋さんです。
大谷さまは1966年、創業者の大谷勝彦会長が24歳の若さで設立
一代で日本一の会社への成長を成功なさいました。
現在74歳になられる大谷会長が事業承継への着手をなさったのは
今から20年ほど前の55歳を過ぎた頃とのことです。
1)親族には3人の娘さんがいらっしゃいましたが、どなたも継ぐ意志を持たず
2)幹部社員にもその意志を持つ方がいらっしゃいませんでした。
そのようなことから1998年夏にインターネットでの社長の公募を試みられました。
結果、大企業の部長職を経験した50歳代の方を取締役待遇で迎え入れ
新規PJを主幹するなど後継者としての経験を積ませようとしたものの、
思うように新事業を軌道に乗せることができず、
社長となるこくとなく会社を去られました。
その後、後継者確保に難渋している姿にいたたまれず
次女の大谷尚子氏が社長を継がれました。
外部からの後継者の失敗について尚子社長が興味深い考察をされています。
1)創業者社長:卓越した経営センス、カリスマ性。実績、実行力
→ 組織は社長のトップダウン(指示)に従い動くワンマン経営に慣れる
→ 組織を整備する必要性や社員が自ら考えることの必要性も少ない
→ 組織が未整備である以上、実績とカリスマ性をトップが備えることが不可欠
2)社外後継者候補:大企業での組織運営経験
→ 整った組織体制のもとで組織の長のの指示命令で成果を出す
→ 組織の長に必要なのは成果をだすために、社員に対して指示を行い
行動や成果を適切に管理していく力=マネジメント能力が必要
→ 未整備な組織ではマネジメント能力は発揮し得ない
→ 未整備な組織において個々の社員は実績のない長の命令には従わない
以上のように課題を整理され、会社を社長の命令を持つトップダウン型組織から
従業員が自ら考え行動する組織作りへの取り組みを自らの職責となさいました・
3)環境整備
尚子氏は経験や実績が不足している(少なくとも先代との比較では不足している)
社長がすべきこととして環境整備を上げていらっしゃいます。
1. 現在と未来の会社のことを真剣に考えているのは、会社で働いて社員である。
2. 現場で働く社員は、トップよりも問題点や改善点に気がついている。
← 気づきを行動に移せない環境に社員をトップが置いている。
3. 社長の仕事は改善の気づきを行動に移すことができる環境を整えることである。
4. あわせて、現場に出向き現場の意見を傾聴し、その改善を助け促しながら
意識改革を進めていくことも大切である。
事業を起こし拡大していくフェーズでのリーダー像、
事業を永続するための組織作りに移行したフェーズでのリーダー像
とても興味深い考察です。