日本と欧米の女性の労働状況の差を示すものとして
女性の年代別に労働力率をグラフにした表が用いられます。
労働力率とは労働力人口(働いている人+職を探している人)を人口で割った値です。
就労者でも、失業者(職を探している人)でもない人が多ければ労働力率は低くなります。
従来、日本の女性の労働力率は20代後半にピークを示し、
30代から40代で大きく低下、
再び50代で上昇するM字型のグラフを描いていました。
欧米では30代から40代で低下しないため台形のグラフを描きます。
社労士の勉強をしている時に、初めてこのグラフを見て明らかな違いに驚きました。
2017年7月の最新の調査では10年前の2007年と比べ
グラフの形が明確に変化していることが報告されています。
15歳から64歳人口に占める女性の労働力率はおよそ70%であり、
10年前と比べ全ての年代で女性の労働力率は上昇しています。
M字の底である35歳〜45歳の労働力率も75%を上回り
グラフの形はM字から台形に近づきその上辺も高くなっています。
このような劇的な変化の要因は企業が女性の離職防止に取り組んで来たことや
医療・福祉など雇用の場が拡大したことなどが挙げられています。
裏付ける数値としては、
1)雇用保険の育児休業給付金の受給件数が2006年度の13万件から
16年度33万件弱と2倍以上に増加しています。
2)15歳から64歳の生産年齢人口がこの10年間で700万人以上減る中で
女性の労働力人口は約200万人増加しています。
女性の労働力率維持向上の阻害要因としては保育所不足が挙げられています。
実際に待機児童は減少することなく2万6千人強まで増加したとされており、
特に都市部では政府による需給のミスマッチ解消は容易ではないとも言われています。
歴史的な変化が起きていることに間違いありません。
ただ、台形を描くとされている欧米でも実際に働いている女性の役職などが
同年代の男性比較して低く、その要因は働き方であるとされていました。
これは数年前にフィナンシャルタイムスに特集記事として掲載されていました。
その記事の中で、今のような管理職の働き方(長時間、休日出勤、長期出張)であれば
そのポジションへの昇進はノーサンキューであるというセンテンスが印象に残りました。
質的な面では日本も欧米もそれほど変わらないのかなと感じたことを覚えています。
日本でも夫の収入低下などによりパートで働きに出る女性も多いとされています。
労働力率の向上という量的側面の充足に留まらず
優れた女性の能力を高いポジションで発揮する働き方を確立し
多様性による事業成長を獲得していく。
そのような考え方への転換が求められています。
参照:2017年9月9日 日経新聞