1991年からの26年間でおよそ10万6000人に総額約600億円の
振替加算年金の支給漏れが確認されたとの報道がありました。
一人当たりの平均支給漏れ額は56万円、
最高額は590万円であったとのことです。
今回の支給漏れは年金の一元化により、
民間企業の会社員と公務員などの共済年金加入者の記録統合時に
人為的なミスがあったことがその要因とされていますが、
振替加算という制度自体が分かりにくいので少し整理してみます。
① 年金制度
年金制度は大きく分けて
1)全国民が加入する国民年金
2)サラリーマンや公務員などが加入する厚生年金
(農家の方や自営業者の方は加入不能)
に分けられます。
年金を建物に比喩して説明される場合に、
1)を1階部分、2)を2階部分と説明されることがあります。
② 振替加算の前提(1):ご主人の厚生年金に加給年金が支給されている
振替加算は国民年金の老齢基礎年金への加算年金です。
振替加算は大正15年4月2日から昭和41年4月1日以前にお生まれの
扶養対象配偶者の方(以下、”奥さま”と表記)を対象としています。
奥さまを扶養している配偶者(以下、”ご主人”と表記)が
老齢厚生年金や障害厚生年金を受け取っている場合、
以下の条件で奥さまを対象にご主人の厚生年金に加算が行われます。
1.老齢厚生年金等:被保険者期間が20年以上であること。
* 20年は年齢による短縮特例があります。
2.障害厚生年金等:その障害により障害基礎年金の受給権を持つこと
いずれの場合も年間の加算額は224,300円(平成29年度)です。
③ 振替加算の前提(2):加給年金額が支給されなくなる
ご主人への加給年金額は奥さまが65歳になり、
奥さまがご自身の老齢基礎年金を受け取るようになると支給されなくなります。
④ 振替加算の根拠
本来は65歳以後は奥さまが老齢基礎年金を受け取ることができますので、
1)奥さまが64歳まで
ご主人:老齢基礎年金+老齢厚生年金+厚生年金への加給年金
奥さま:なし
2)奥さまが65歳以後
ご主人:老齢基礎年金+老齢厚生年金
奥さま:老齢基礎年金
というように世帯の年金収入は変化します。
老齢基礎年金は満額で779,300円(平成29年度、40年加入の場合)ですから、
加給年金額の224,300円よりも高額です。
世帯収入について不都合は無いように思えます。
ただ、昭和61年4月から施行された現在の国民年金法は
20歳以上60歳未満の奥さまは全て強制加入としていますが、
昭和36年4月1日から昭和61年3月31日まで施行されていた旧国民年金法では
奥さまは任意加入とされていました。
その期間に任意加入されず、保険料を支払っていないと
満額の年金額から未加入期間相当額を減額されます。
未加入期間が長ければ、奥さまが受け取る老齢基礎年金額は低額になります。
それでは世帯の年金収入が65歳以後減少するおそれがありますので
その救済のために振替加算の制度が設けられています。
⑤ 振替加算の額
加給年金額(224,300円 平成29年度)×奥さまの生年月日に応じて定める率(1.000〜0.067)
若い方ほど率が低くなりますし、
昭和41年4月2日以後に生まれた方は20歳になった時点で
現在の国民年金法に強制加入していますので、その対象となっていません。
⑥ 振替加算が行われない場合
1)奥さまが20年以上厚生年金に加入して入り、ご自身が老齢厚生年金を受給可能な場合。
2)奥さまが障害基礎年金、障害厚生年金等を受給可能な場合。
なかなか分かりにく制度です。
ご主人と奥さまのそれぞれの厚生年金(一元化前の共済年金)への加入期間などが
その条件となっていますので、確かにミスが出やすいように思えます。
今後、マイナンバーが機能することでこのようなミスもなくなり
保険運用にかかる事務費用全体もの無駄がすくなるなるのかなと思います。