健康保険において、保険給付を行い保険料を徴収する経営主体は
1) 主に中小企業の従業員を事業対象とする全国健康保険協会
2) 主に大企業の従業員を事業対象とする健康保険組合
以上の2つに分けることができます。
健康保険組合は企業や企業グループごとに作られ
現在約1400の組合があり、加入者は2900万人とされています。(協会加入者は3800万人)
2017年度はこのうち7割の組合の収支が赤字の見通しとされています。
保険は加入者の相互扶助を目的に
給付支出と保険料負担のバランスを取るように設計されています。
大企業の従業員は収入が相対的に高く、
給付支出単価は中小企業従業員と変わらないことから
保険料を全国健康保険協会よりも低い料率にすることが可能です。
このことが各企業が健康保険組合を作る理由の一つとなっていますが、
現状の収支赤字が続けば、収支均衡のために保険料率を上げざるを得ません。
その結果、団塊の世代が75歳以上となる2025年度には
4分の1の健康保険組合の保険料率が健康保険協会の料率を超える見通しです。
保険料率が協会の率を超えると、組合を作る理由が無くなりますので
結果、多くの組合が解散に追い込まれると予測されています。
なぜ、収支が悪化するのかですが、
1) 高齢者医療への支援金が増加していくため
2) 単価上昇×患者数増加により医療費が高騰していくため
以上の二つが主な原因として挙げられます。
高齢者の医療保険としては後期高齢者医療保険がありますが、
75歳以上の後期高齢者の多くは収入が年金などに限られる一方で
加齢による疾病率は高まるため、収支のバランスがとれません。
収入面の不足を補う仕組みが健康保険の保険者による支援金納付です。
健康保険組合の支援金はその一部は加入者の人数比、
その一部が加入者の収入比とされてきましたが
本年度よりその全てを収入に比例したものとする総報酬割となりました。
結果、組合の支援金負担が増しています。
また、後期高齢者の増加などから2025年には
支援金の負担が加入者への医療給付費用を上回るとされています。
(保険の原理からすると、自らがその健康維持に努め医療費支出を減らしても
保険料負担が下がらないこととなりますので不合理な状態と言えます。)
今後、組合は収支を改善するために
1) 短期的には日常的運営の中で給付内容の適正確認などを厳格化する
2) 中期的には医療費単価の引き下げ(薬価引き下げ、技術料の据え置きや引き下げ)を求めていく
3) 中長期的に高齢者の医療費負担の増加を求める ( 収入だけでなく、金融資産を加味した負担率)
以上のような動きを強めていくことが予測されます。